おおよその雰囲気を知るには、そのグループの主催者や参加者に直接聞いてみるのが良いでしょう。
自助グループには個性があるので、それぞれの雰囲気は異なります。 同じ自助グループであっても参加メンバーによって雰囲気は変わってきます。 同じ参加メンバーであっても、話題や気分、場所によって雰囲気は違うでしょう。 そして、参加しているあなた自身の気分や体調によって、雰囲気の感じ方は異なってきます。 このように自助グループの雰囲気は生き物ですので、参加してみなければわからない部分があります。
また、自助グループに対して暗い、固い、ネガティブなイメージを持っている人がいるかもしれませんが、 自助グループだから辛い、悲しい、しんどい話ばかりする、とは限りません。 前向きでポジティブなミーティングもあるでしょう。 笑顔や笑いの絶えない和やかなミーティングもあるでしょう。 飲み会と変わらないようなミーティングだってあります。
「ピア(peer)」とは「仲間」という意味です。「当事者」と置き換えても良いでしょう。 「ピアサポート」とは、同じ問題に向き合っている者同士による、共通の経験と関心に基づいた相互支援活動です。 その活動は、仲間が、そして自分が、自分の問題を自分で解決するための自己決定を手助けするためのものです。 本人に代わって問題を解決することではありません。
ピアサポートの手段のひとつがピアカウンセリングです。 ピアカウンセリングを数人の仲間同士で行う場合の考え方は以下のようなものです。
バウンダリー(boundary)は「境界」を意味する英語です。 ピアサポートの言葉としては「他人との境界」という意味を持ちます。 ピアサポートでは、バウンダリーを越えて相手の領域に踏み込み過ぎたり、 自分の領域が相手に浸食され過ぎたりすることがしばしば起こります。 自分と相手との間にバウンダリーの線引きを出来ていないと、以下のようなことが起こります。
なんらかの悩みや問題を持った当事者が、 その問題にまつわる経験や経緯、考えたことをホワイトボードに書き出し、 自分にマッチした自分の助け方を当事者同士で互いに話し合うことです。 北海道浦河町にある社会福祉法人「べてるの家」と浦河赤十字病院精神科で始まったプログラムですが、 精神障害の枠を超えた様々な生き辛さの問題を扱うものとして広がり始めています。
自助グループが行う当事者研究は以下のようなメンバーで構成されます。
研究の手順としては、研究者が悩みや問題についてこれまでの経緯や対処方法を話します。 その際、自分の問題を比喩的なユーモアを用いて語ることがあり、 「べてるの家」ではこのようなべてる基本用語を使っています。 研究には「片付けられない病」のような題名・病名を付けます。 共同研究者は問題の現状について質問したり、抱えている問題の背景を話したり、 自分の場合の対処方法や既存の対処方法との比較検討をしたりしながら、共にその問題について考えます。 記録係は研究者や共同研究者の発言をホワイトボードに記録します。
自助グループが行う当事者研究の中には、研究内容を匿名の研究事例として一般に公開する場合があります。 その場合自助グループのルールにある『ミーティングで聞いた話は外部で話さない』が 適用されないことになります。しかし、ミーティング活動の内容が公開されることで、 当事者活動が社会との接点になって問題への理解を促すことになるかもしれません。
当事者研究の目的は「研究する」ことであって、問題の解決を目指すものではありません。 しかし研究の結果、研究者が行き詰っていた自分の助け方に新しい視点が開けるかもしれません。
何も話したくないときには発言をパスすることができます。無理に自分の事を話す必要はありません。 ミーティングへ参加したということは問題に向き合う意思の現れですので、参加するだけでも十分意味があることです。 話したくない、話せない、話すことに葛藤や不安がある、けれどもそのミーティングに参加している、 そのこと自体があなたのメッセージです。ミーティングで誰もそのことを非難したりはしません。
そして、その場にいて人の話に黙って耳を傾けるだけで、人の役に立つこともできます。 話す人にとっては、聞いてくれる人がいてありがたいことだからです。 似た問題を抱えた人の話に耳を傾けてみてください。中にはどうでもいい話や、 くだらない話、ろくでもない話もあるでしょう。しかしあなたが共感できる話もあるかもしれません。 そのような話を聞いたとき、あなたは自分の事も話してみたくなるかもしれません。
自助グループは自分の意思で参加するものです。誰かに指示・強要されたりして参加するものではありません。 いつまで参加し続けるのか?という問いに対する答えを出すのもあなた自身です。 あなたはいつでも、自助グループに出たくないから出ない、出る必要がないから出ないという判断を下すことができます。 また、抱えている問題が解消した、あるいは問題に向き合って生きていく力が付いたから、 もう自助グループに行く必要がないと判断するもごく自然なことでしょう。
その一方、それでも自助グループに参加し続ける、という選択肢もあります。 自分は自助グループに行く必要がないと判断した後でも、自助グループに参加し続けることで あなたはかつての自分と似た状況にある人の助けになることができるかもしれません。 あなたが自助グループに行くのをやめても、自助グループ自体は存続していきます。 その自助グループには、問題の渦中にあって苦しんでいる人もいるでしょう。 あなたはかつての苦しかった自分の体験を語ったり、自助グループの運営に加わることで、 そんな人たちの目標、ロールモデルになったり、人から頼られる存在になるかもしれません。 ただ、そのときに注意すべきことがあります。あなたが問題の渦中にある人を指導したり説教したりしてしまうことです。 あなたがそのような状態になったとき、その自助グループは崩壊への道を辿るかもしれません。