英語のピア(peer)という言葉は(年齢・地位・能力・経験などが)同等の者・同僚同輩・仲間という意味です。 ピアサポートという言葉は「仲間を支える」という意味になりますが、 その活動は一方が支える、支えられるという一方通行のものではなく、 仲間同士でお互いがお互いを支える、支えられるというものです。
ピアサポートが持っている考え方は以下のようなものです。
人は誰でも適切な機会さえあれば、自分の問題を自分で解決することができる
ここで言う「解決」という言葉はしばしば「リカバリー」という言葉に置き換えられます。 「解決」や「リカバリー」は、単に人に頼らずに自立するとか、障害・症状がなくなる、ということではありません。 自らが抱えた様々な問題に対して主体的に向き合い、困難を抱えた状態であってもその中で自分の生き方を追求していく、ということです。 障害や症状、困難のないかつての自分に戻ろうとするのではなく、新しい生き方を探っていくこと、と言えるかもしれません。 ピアサポートの活動とは、仲間が、そして自分が、自分の生き方を追求していく自己決定を手助けするためのものです。 仲間や周りが本人に代わって問題を解決することではありません。
心身障害・疾患など当事者の相互支援活動として自助グループや患者会が行っているミーティング活動は、 ピアサポートという考え方の枠内に入れることができるでしょう。 そしてピアサポート活動を行っているのは、心身障害・疾患などに向き合っている人々だけではありません。 一部の学校・大学では、学生同士が学生生活で生じる様々な問題に対処するためにピアサポート活動を取り入れています。
ピアサポートという考え方とその手法は、 既に自助グループ・ピアサポートの運営に関わる人や参加している人はもちろん、 そうでない人も人間関係を円滑にするための知識として知っておいて損はないでしょう。ピアサポートの活動とは何か?何がピアサポートの活動になるのか?一概に言うのは難しいことです。 扱っている問題によってもその活動の中身は異なってきます。 病院や刑務所に行って自分の経験を話すことがピアサポートなのかもしれません。 シェハウスで共同生活をすることがピアサポートなのかもしれません。 あるいは一緒にどこかに行ったり、啓蒙活動をしたり、何かを作り上げることかもしれません。 おそらく最も単純で、あらゆる問題を扱っていても普遍的にできるピアサポートは、 「黙って自分の体験や考えを聞いてもらい、黙って相手の体験や考えを聞く」ということになるでしょう。
ピアサポートの活動とは何か?ただ一つ言えることがあるとしたら、 「この活動はピアサポートだろうか?指導になっていないだろうか?押しつけになっていないだろうか?」という疑いを持ち続け、 葛藤し続けることの中にしか答えはない、ということではないでしょうか。