自助グループの立ち上げ
- 立ち上げ前に
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どの自助グループにもほぼ共通する基本的なルールはありますが、
参加者や雰囲気は自助グループによって千差万別です。だからといって、
自助グループへの参加経験が全くないままに知識だけで自助グループを立ち上げると、
自分だけでなく参加者もイヤな思いをしかねません。
まずは似たような問題を扱っている自助グループや、
参加条件がゆるい自助グループに何度か参加して雰囲気をつかんでみるといいでしょう。
- 中心となる運営メンバーを決める
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できれば数人の仲間から始めたほうが相談や役割分担ができて良いかもしれません。
自分が通っている施設や自助グループ等で、立ち上げに興味を持ってくれる仲間を探すのもいいでしょう。
地域の社会福祉協議会・保健所・生活支援センター等で立ち上げについて相談してみるのもいいかもしれません。
もちろん1人で自助グループを始めて、1人で運営することも可能です。
しばらく1人で運営してみてスタッフの必要性を感じたら、ミーティングの際に運営メンバー募集の告知をしたり、
何度も足を運んでくれる人に声をかけてみると良いでしょう。
- 名称を決める
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自助グループの名称は、どんな自助グループなのかすぐわかる「XXX病患者の会」のようなものや、
「AA」のようなアルファベット数文字のもの、
あるいは「せせらぎの集い」のようなものが多いようです、
露骨に自助グループの概要がわかるような名称は、会場で名称を掲示したときに
抵抗を感じる人がいるかもしれません。
関係者にはすぐわかっても、それ以外の人にはわからないような名称が理想的です。
既に同じ名前の自助グループがないかどうかgoogle等で検索して確認しましょう。
- 趣旨・活動内容を決める
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おそらくここで決めた趣旨・活動内容をチラシに印刷したり、ウェブサイトに載せたりすることになるでしょう。
- どのような趣旨なのか
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どのような趣旨で活動していくグループなのか決める必要があります。
グループの趣旨としては以下のようなものが考えられますが、
いくつかを兼ねた趣旨を持つ場合が多いかもしれません。
- 居場所を作る
- 問題とのつきあい方を学ぶ
- 問題の解決や低減
- 情報交換
- 社会に対する働きかけ
- どのようなミーティングにするか
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どのようなミーティング形式にするのか決める必要があります。
ミーティングの形式としては以下のようなものが考えられます。
もちろんここに載っていないユニークなミーティングもあるでしょう。
インターネットのSkype(同時通話、ビデオ通話ができる電話のようなもの)を利用したミーティングも開催されているようです。
- 雑談
- 言いっぱなし聞きっぱなし
- 決めたテーマに沿って話す
- 参加者が今困っていることを話してそれについて皆で話す
- テキスト等の読み合わせをしてそれについて皆で話す
- 司会が中心となって話をまわす
- どのような人々が参加できるのか
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一般的には自助グループが扱っている問題に向き合っている当事者が参加対象となります。
それ以外の参加対象として、以下のような人々も含めるかどうかを検討する必要があります。
誰が来ても構わないという形(オープンミーティング)にする場合もあります。
- その問題の経験者
- 家族
- 遺族
- 友人
- 医療、福祉等の関係者
- ミーティング以外の活動
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ミーティング以外の活動としては以下のようなものが考えられます。
- 電話・メール相談
- 問題に関する啓蒙・イベント等の活動
- 様々な生活支援
- カウンセリング
- ミーティングのルールを決める
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ミーティング形式によってルールは異なってくるでしょう。
多くのミーティングで共通するようなルールをこちらに
記載しています。以下のような点についても予め決めておくと良いでしょう。
- 本名を名乗るかどうか
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ミーティングの際に本名を名乗る場合と、適当なニックネームを名乗る場合があります。
自助グループのポリシーによって異なってくるでしょう。
会員制の自助グループでは本名を名乗る場合があるようです。
- 遅刻・早退・欠席の場合
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遅刻・早退をどこまで許容するか決めておく必要があるかもしれません。
もちろん、遅刻・早退・欠席がまったくの自由でも構いません。
会員制の自助グループでは欠席の場合に連絡をする必要があるかもしれません。
遅刻・早退・欠席がまったくの自由な自助グループでも、
運営メンバーが遅刻・早退・欠席する場合の連絡先や対応などは決めておく必要があるでしょう。
- アルコール等を飲まない、飲んでこない
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明文化するまでもないことですが、
自助グループによってはこういった点についても予め決めておいて明文化したほうが良いでしょう。
- 話題に関する制限
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政治・宗教については様々な主義・信条があるので、
聞いている人が不快になるのを避けるためにタブーな話題として避ける自助グループがあるかもしれません。
抱えている問題についてはあえて話さないというルールにすることもできます。
何か避けておくべき話題があれば、予め明文化したほうが良いでしょう。
- 会場を決める
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会場は安定して利用できるかどうかが大きな問題です。
会場変更が頻繁に発生するとその度に場所・日程の変更連絡をしなければなりませんし、
参加者にとっても継続的な参加が難しくなります。
交通の便、経済負担、利用のしやすさなどから総合的に判断することになります。
地域の社会福祉協議会・保健所・生活支援センター等で会場について相談してみるのもいいかもしれません。
- 公共施設
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公民館、市民センターなどの貸会議室が考えられます。
多くの自助グループはこのような公共施設を利用しています。
各行政区域のウェブサイトや、
google等で「貸館 渋谷」というように 「貸館」「貸会議室」「地域」といったキーワードで検索すると見つかるかもしれません。
安価で利用できますが、利用予約の手続きが煩雑だったり、住居・職場がその地域にないと利用が難しい場合があります。
詳しくは地域にある社会福祉協議会に相談してみると良いでしょう。
- 関連施設
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自分が利用している、あるいは扱っている問題に関わりの深い病院・クリニック、地域の保健所・生活支援センター・デイケア施設・作業所等に相談すると、
会議室等を利用できる場合あります。安価もしくは無料かもしれませんが、利用の際に何らかのコネが必要かもしれません。
施設自体がその問題に対する理解が大きいので、視聴覚資料の利用・保管など様々なメリットがありそうです。
- 教会・寺社等
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安価もしくは無料かもしれませんが、利用の際に何らかのコネが必要かもしれません。
既に他の自助グループが利用している場合には利用の相談がしやすいでしょう。
参加者が宗教的な抵抗を感じるかどうかも考えておく必要がありそうです。
- 喫茶店
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安価で利用できて飲食が可能ですが、席を確保できないことがあるかもしれません。
しかし最大の問題は他のお客に話を聞かれてしまう可能性が高いことです。
それでも構わなければ問題ありません。
席の確保ができて他のお客に話を聞かれる恐れが少ない環境であれば検討に値するでしょう。
- 民間の貸会議室
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1時間で数千円かかるような高価な場合が多いです。
しかし資金が潤沢で、インターネットや視聴覚資料、プレゼンテーションできる環境を利用したい等の場合には、
検討してみるといいかもしれません。
- 個人の家
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煩雑な予約が不要、視聴覚を含む資料が保管・利用できる、和やかな雰囲気を作れるといったメリットが考えられます。
その一方、所有者の負担が大きい、開催日時等が所有者の都合に左右される、利用者が気を使う、
場所がわかりにくい等のデメリットがあるかもしれません。
- 共用アパート
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共同でアパートの一室を借りるという手段もあります。
いくつかの団体で共有すれば費用負担を抑えられるかもしれません。
大家がこのような利用を許可するかどうかという問題もありますが、
煩雑な予約が不要で、視聴覚を含む資料が保管・利用できて、和やかな雰囲気を作れます。
この場合、部屋の管理者が必要ですし、利用ルールを明文化する必要もあるでしょう。
- 公園
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無料で予約が不要、オープンな雰囲気を作れるといったメリットが考えられます。
ただし天候に左右されるのが難点です。
夜間の利用が難しい、他の利用者に話を聞かれてしまう可能性があるといったデメリットもあります。
しかし芝生で車座になってミーティングをするのも悪くないのではないでしょうか。
週末の日中に天候に恵まれた場合のイレギュラーなミーティングとして試してみる価値はあるかもしれません。
- 開催の日時と頻度を決める
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開催の日時と頻度は運営メンバーの都合、負担と参加者の都合の兼ね合いで決めることになります。
開催日時は平日の夜、または土日にするのが一般的です。頻度は、月1回、月2回、毎週という3パターンが多いようです。
開催頻度は、月1回の場合は第1月曜日、月2回の場合は第1・3月曜日、毎週の場合は月曜日といった頻度にすることが多いようです。
開催時間は1時間から2時間が一般的ですが、1時間半にしている場合がよく見られます。
- 会費を決める
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会費は会場使用料、チラシ等の印刷代、お茶代等の経費と参加人数の兼ね合いによって決めることになります。
チラシやお茶はなくてもかまいませんが、会場使用料だけは賄えるようにする必要があります。
- 自由献金にするか、定額制にするか
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「志があって金銭に余裕のある方」に献金をしてもらう自由献金と、定額制にする場合があります。
自由献金の場合は参加者が献金しない場合もありますので、収入は不安定です。
献金があったとしても一人あたり百円~数百円程度と考えておいたほうが良いでしょう。
定額に設定する場合でも1回当たり数百円程度にするのが妥当でしょう。
- 毎回徴収にするか、一括徴収にするか
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毎回のミーティング前後に徴収するのが一般的です。
月一括や年一括の徴収にすると収入は安定します。
しかし参加者は毎回必ず参加できるとは限りませんし、経済的な負担が重くなります。
初参加者に会費を求めるかどうかも考えておく必要がありそうです。
- 広報・メンバー募集方法を決める
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参加した人が新しい人を連れてくるような口コミが理想的ですが、そのような良い循環はなかなか難しいところです。
広報手段としては、チラシかウェブサイトが有力な方法です。以下のような内容を記載すると良いでしょう。
- 自助グループの名称
- 自助グループが扱っている問題
- 参加対象
- 開催日時、頻度
- 開催場所、交通案内
- ミーティング形式
- 趣旨説明
- 連絡、問い合わせ先(電話、メールアドレス等)
- ウェブサイトのURL
- チラシの場合
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配布場所をどこにするかが大きな問題です。
病院・クリニック、地域の社会福祉協議会・保健所・生活支援センター・デイケア施設・作業所、役所の福祉関連の窓口等で
自助グループのチラシを置かせてもらえるかもしれません。
抱えている問題を扱った講演会、シンポジウム、セミナーなどのイベントでチラシを配布できるかもしれません。
似たような問題を扱っている自助グループのミーティングで配布してもらえるかもしれません。
- ウェブサイトの場合
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多くの自助グループがウェブサイトを用意しています。無料ブログを利用するのが簡単で良いでしょう。
「無料ブログ」でgoogle等を検索すると多くの候補が見つかります。最近(2017年現在)では、
Jimdo(ジンドゥー)や
WIX(ウィックス)といった無料ホームページ作成サービスも多く利用されています。
ウェブサイトを開設してもgoogle等の検索で引っかからなければあまり広報の効果はありません。
「扱っている問題」「自助グループ」「地域」という3つのキーワードで検索にひっかかるように
ウェブサイトのタイトルやコンテンツにそれらのキーワードが含まれるようにすると良いでしょう。
google等の検索で引っかかるようにする対策はSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)と呼ばれています。
興味のある方は調べてみてください。
より広く知ってもらうためには、TwitterやFacebookといったSNSで宣伝するのも良いでしょう。
既に実績と知名度がある自助グループにお願いしてウェブサイトで紹介してもらったりリンクを貼ってもらう、
あるいは当サイトのようなウェブサイトに情報登録するのも良い方法です。
尚、ウェブサイトを開設すると不特定多数の人の目に触れることになります。
結果として、扱っている問題と関係のない冷やかし、研究・取材目的の人がミーティングに潜り込んでくる可能性がないとは言えません。
- 運営メンバーの役割分担を決める
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運営メンバーの役割には以下のようなものがありますが、この役割が全て必要という訳ではありません。
ここで挙げられていない役割もあるかもしれません。
一人でいくつかの役割を兼任する場合も多いでしょう。
これらの役割はメンバーに固定しないで、ミーティング毎、あるいは三ヶ月、六ヶ月毎などでローテーションさせる場合もあります。
- 会場係
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会場に関わる物事を管理します。具体的には会場の使用許可を取る、開場、
照明・空調の確認、チラシ類の準備、机やイスの並び替え、お茶の用意などをします。
- 司会
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ミーティングの司会進行を行います。
参加者全員がルールを守り、時間を分かち合って話をできるように気を配ります。
- 会計
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グループの収入と支出を管理します。
参加者から会費を徴収し、支出があれば領収書と引き換えに費用を支払います。
- 広報・資料管理
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チラシやウェブサイト、ミーティングの際に利用するマニュアル等を管理します。
電話やメールで問い合わせがあった場合の対応もします。
- 困ったときは
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運営上のことで何か困っているときは、クリアリングハウスや社会福祉協議会、精神保健福祉センター
などが相談に乗ってくれるかもしれません。